本質をつく指摘をしてくれる良本です。

自分がわかっていないと,人に性格に,わかりやすく伝えることは不可能です。
私は自分の「知らないこと」を子供たちの「素朴な疑問」によってたくさん知らされました。あるいは,私が知っていることでも,知らないことでも,知らない大人が大勢いることを初めて知りました。
彼らの疑問は時に本質を衝きます。P28

少なくとも文章で物事を伝える場合,人の意見を聞くことなく上達することは,まずありえません。特に文章力に根拠のない自信を持っている人は,独りよがりの文章を書きがちで,読む人の立場を考えていないことが多いものです。
まずは謙虚に,人の意見に耳を傾けることから始めましょう。 p31

ニュースで原稿を書く場合は「5W1H」,すなわち「When=いつ」「Where=どこで」「Who=誰が」「What=何を」「Why=なぜ」「How=どのように」したのかを押さえることが基本であると言われています。p108

演繹法とは,ある事柄を前提として,具体的な1つの結論を得る推論方法のことです。
これに対して帰納法とは,個別具体的な事柄から,一般的な規則を見出そうとする推論の方法です。
(中略)
たとえば「バラにトゲがある」という前提から出発して,ハマナスはバラの仲間だからハマナスにもトゲがあるだろう,と推論するのが演繹法です。
これに対し,観察した100本のバラにすべてトゲがあったとします。そこで「バラにはトゲがある」という結論を出すのが帰納法です。p111

「緩やかな演繹法」とは,演繹法と銘打っているのですから,基本的には演繹法です。ただ,状況によっては帰納法を取り入れるのです。その意味で「緩やかな」と断っています p113

文章力に自信があるからと,報告者や提案書を小手先でごまかし続けていると,実を伴った仕事はできません。文章力や表現力を磨くと同時に,中身を伴う文章を書けるように,そのための突っ込んだ調査をすることです。 p119

一人ツッコミ(あるいは1人ブレーンストーミング)は,書く行為だけではなく,話すときにも有効です。p122

見直しはプリントアウトした上でも行う。さらに欲をいえば,書いた後,しばらく「寝かせる」ことがより望ましいといえます。p127

どうしても自分の殻を抜け出せない部分があります。その殻は,自分の癖であったり,自分の限界であったりします。やはり文字通りの「他者の指摘」が不可欠です。p131

便利が言葉を使っていると,使う人が思考停止になってしまう恐れがあることを,知っておきましょう。
「〜的」「〜性」という言葉の多くは,あるいはいくつかはこうした性質を持っています。p148

図解はあくまで手段であって,目的では無いことを自覚すべきでしょう。p159

むしろ「接続詞を使わないで文章を書こう」と決意しますと,接続詞が無くても論旨が通るように文章の論理を研ぎすまさなければなりません。この努力を続けていくと,論理的で読みやすい文章が書けるようになります p172

この「いずれにしても」は文章を読んでいると,しばしばお目にかかります。それまで,せっかく論理を積み上げてきても,このひと言があることで,それまでの論理展開が台無しになってしまいます。p180