読んだ本

ハゲタカ(上) (講談社文庫)

ハゲタカ(上) (講談社文庫)

ハゲタカ(下) (講談社文庫)

ハゲタカ(下) (講談社文庫)

感想

以前,NHKのドラマでやっていた原作の一部です。いわゆるハゲタカファンドに対する企業防衛をモチーフにした小説ですが,ほとんど伏せ字になっていない企業が多いので,生々しい経済小説になっています。

レバレッジというのは「梃子」という意味です。我々が投資しようとしている案件を担保に市場から資金を調達することを申します。と申しますもの,現在の金利は低金利で推移しておりますので,二%もあれ,市場からの資金調達も可能です。ところが,我々が投資家にお約束している資金のリターンは,最低でも10%以上です。ならば,市場から安い金利で資金を調達した方が,結果的に投資家に高いリターンを返すことができるのです。上p54

「なあ,芝野。お前,商売の鉄則を忘れてへんか」
「商売の鉄則ですか…」
「せや,ルールを決める方が主導権を握る。こっちが劣勢やったら,ルールを変えることや」
そう言われて芝野はハッとした。それはアメリカでは「ゲーム理論」と呼ばれるビジネス理論だった。もちろん「大阪から出たことないねん」という飯島は,「ゲーム理論」という言葉すら知らないだろう。だが,彼の理屈は,まさに「ゲーム理論」そのものであった。 上p273

バブル崩壊移行,日本中で日常茶飯事で起きたであろう光景だった。オーナー社長一族の会社の私物化と放漫経営。そして番頭たちによる粉飾決算で「裸の王様」となったオーナーは,虚構の上に創り上げられた「健全経営」にあぐらをかき続けた挙げ句,突然,死を宣告される。
莫大な負債,問われる経営者責任。だが,トップもその周辺も「銀行が無理に金を貸すからだ」「社会全体がバブル投機に浮かれていたのだ。我々は社会の犠牲者だ」と自らの非を認めず,責任をとることすらしない。上p480

「企業再生といえば,人と金をリストラして『負の遺産』を切り離す”外科手術”が喧伝されている。しかし,本当の企業再生はそこからスタート。その後企業が再び己の足で立ち上がり,社員と共に蘇ることができなければ『再生』とは呼ばない。
(中略)
そんなプロの企業再生者だけが,ターンアラウンド・マネージャと呼ばれるのだ。 下p21-22