読んだ本

燃料電池 (ちくま新書)

燃料電池 (ちくま新書)

感想

技術者が夢中になって開発を進める状態は,いわば「エジソン状態」といでもいうべき時間である。発明王エジソンは新しいアイディアを思いつくとすぐにそれを試してみようとして,睡眠時間を削って不眠不休で実験に没頭した。
(中略)
ひとつの問題を解決すると,次の問題が生じてくる。いくつもの解決策が思い浮かぶ。それを片っ端から試して最高の解決策を見出してゆく。このようなプロセスは技術開発の醍醐味であり,多くの技術者がそのダイナミックな「エジソン状態」に魅入られている。バラードリサーチ者の燃料電池の開発も,そのような時間を経てでき上がったものだのだ。
p61

一度大量生産が始まるとそのコストが大幅に低下する可能性がある。この様子を表現するのが学習曲線である。学習曲線とは,経験曲線とも呼ばれ,累積した知識や経験についての人間の活動をマクロに記述するもので,工業製品のコスト低下の分析に利用されている。過去の多くの工業製品に関する実測結果から,以下のような学習曲線の原理が導き出されている。「累積生産量が二倍になるとき,生産コストや生産に要する時間が一定割合だけ低下する。」
学習曲線は,累積生産量のべき乗でコストが低下するという数学的な曲線である。
p125

燃料電池の反応温度は80度程度なので,冷却しようとしても大気温度との温度差が大きくとれず,大量の冷却水をまわしてやらなければならない。そのためラジエーター(放熱器)が大型になってしまう。ある設計例では既存自動車の二倍の放射面積が必要になっている。しかし,これは何とかレイアウトしようとすればできる範囲のようだ。
p137

ジェフリー・バラードが燃料電池の効用を説いて歩いたときに,石油産業からの意図的な干渉があったということを言っている。よく,昔からいわれていることがある。なにかのエネルギーについての大発明が行われると,巨大なグローバル石油産業からこれをつぶしにかかる,という噂である。
p220