読んだ本

発明立国ニッポンの肖像 (文春新書)

感想・興味を引くところ

世界で最初のビタミンであるオリザニンの発見者にも関わらず，その研究概要がダイジェストで紹介されただけで，オリザニン発見の本当の意味が正確に伝わらなかったために，不当にも世界から二番煎じという謂われのないそしりをうけた梅太郎。蛇足ながら，ビタミンの名付け親はフンクに譲るにしても，世界で最初にビタミン（オリザニン）を発見したのは鈴木梅太郎であることはいうまでもない。
しかし今日，世界の科学の歴史のどこを見ても，世界で最初のビタミン（オリザニン）の発見者・鈴木梅太郎の名前を見ることはほとんどない。その理由は，海外での論文発表にあたっての時期と方法の不手際のほかに，日本国内の医学界の冷遇も大きな理由のひとつに挙げられるだろう。p52

私の郷里の偉人がこんな冷遇をされていたとは！

かくして，国産発の写真電送装置を完成させ，その実験をみごとに成功させた2人の若き大発明家，ただちに「写真電送変調装置」と題する特許申請書を作成し，昭和3年1月16日に出願（特許第84722号）する。さらに，日本電気の頭文字を冠して，これを「NE式写真電送装置」と命名し，意気揚々とこの快挙を社を代表して発表した。が，新聞や雑誌記者からの反応はあく，学会で話題になることすら皆無であった。p108

FAXは戦前から出来ていた事実にビックリ。
http://www.nec.co.jp/profile/empower/history/1928.html
いまだにNEFAXという商品名で販売されています。
http://www.nec.co.jp/pcom/

・YAGI空中線列の意味は？
（中略）
それもそのはず，「YAGIエアリアル・アレイ」とは，戦後「八木アンテナ」の愛称で呼ばれる，高周波指向性アンテナのこと。そして「YAGI」とは，その指向性アンテナを世界に先駆けて発明し，当時東京工業大学学長を務めるわが国電気通信学会の権威，あの八木秀次博士の名だったのだから！
それにしても，日本で発明された指向性アンテナが，なぜ日本では利用されず，敵国イギリスで「YAGIエアリアル・アレイ」という新型電波兵器として実用化されていたのだろうか？その理由を知るために，指向性アンテナが日本で誕生したいきさつと，発明に対する内外での評価について振り返ってみることにしよう。p124