読んだ本

京都 影の権力者たち

京都 影の権力者たち

感想・興味をひいた所

茶室に通じる露地は清めの場とされる。木立が打ち水で輝き,枝折り戸は,この朝切った青竹に替えてある。木の葉1枚1枚までほこりがぬぐわれている。
「亭主は,迎える場を清めることで自らの心を清めようとする意味もあるのです」
茶室はほの暗く,障子が白い。香がたかれ,床の間には17世紀の禅僧,玉舟の書。流れるように「閑雲」と。心静かに,の意味だ。トコトコと湯気を立てているのは,筑前(福岡)の古芦屋釜と聞いた。
「『我が仏,隣の宝,婿舅,天下の軍,人乃善悪』茶席では,こんな世事雑談は慎むのは決まりです」
話題は書,花,道具など。茶事に集中し,亭主の心入れを第一に考えるのが客の心得だ。
(中略)
茶は最後に出る。座は打ち解け,客も亭主もない「無」を感じつつ濃茶を回し飲む。お開きに近いころ,亭主が炉に炭をついだ。「立ち炭」だ。火をつぐことで客に「いつまでもいて下さい」の意を伝え,一方,客は「後片付けもあることだろう」とこれを機に腰を上げる。約4時間。濃密な,計算し尽くされた時だった。
五感をすべて味わう美。奥ゆかしさ,思いやり,最高のものでもてなそうとするが,決して誇示しない。今の日本人が失いつつある日本らしさがここにあり,それが外国人に感動を与えるのだろう。p82-85

この美的感覚が歴史とともに積み重ねって,京都の人々のアイデンティティとなっているのでしょうか。一見,閉鎖的に感じるのはこのせいなのかもしれません。