読んだ本

感想・興味をひいた所

いま東京タワーは見るものになっている。もう東京タワーの上から東京の町を見下ろすことは日常的にほとんどない。東京タワーは,東京のどこかの町から見上げるものになっている。ふだん東京タワーのことは忘れていることが多い。東京タワーはもう東京のランドマークではなくなっている。それでも銀座を歩いていたり,麻布十番を歩いていたりすると,角を曲がったとたん遠くに東京タワーが見えるときがある。ビルのガラスに映った東京タワーが不意に目に入るときがある。そのときは急に,三十年以上も前に,中学校の校庭から東京タワーをはじめて見た日のことを思い出す。p194

いまでも,東京駅に近づく新幹線の窓越しに東京タワーを見ると,東京に帰ってきた実感がわきます。名古屋に住んでいながら東京に帰ってきたという表現はおかしいですけど,そんな気分にさせるのです。東京タワーはランドマークというよりも,無意識に存在を感じる心の支えになっている感がします。