読んだ本

安全・快適エアラインはこれだ (朝日新書 41)

安全・快適エアラインはこれだ (朝日新書 41)

感想

現在,世界で最高度のハイジャック対策を取っているのがエル・アルである。
(中略)
こうしたチェックは,最新技術を駆使した探知機器に頼らず,人間の能力に重点を置いているのが特徴だ。どんな機器にも探知限度があり,機器では凶器を隠し持った人間を大勢の乗客の中から探し出すことはできない。人間のみが経験と直観で想像をめぐらしながら,質問し判断することができることを熟知しているからである。
乗務員,地上勤務員,機内食担当,グランドサービス要員も身元を厳重にチェックされ,シン・ベット(イスラエル秘密警察))の安全チェックを受けた者しか機体のそばに近づけない。地上では,重武装の警備員が24時間態勢で機体を警戒している。さいらに,カウンター付近ではサングラスをかけ,イヤホンを耳に,自動拳銃や短機関銃を隠しもったシン・ベットが巡回している。
滑走路では警備車がエスコートしている。
爆発などの気圧変動により空中で破壊されないように,機体と貨物室は装甲板で補強されている。
(中略)
またSAM7のような熱線追尾型地対空ミサイルをかわすため,チャフ(電波欺瞞紙=ミサイルの接近を察知すると放出し,誤誘導する)も装備している。機内では監視カメラが作動し,スカイ・マーシャル(航空警察官,実際にはシン・ベット)が7〜8人(B747クラス)普通の乗客を装い,自動拳銃,短機関銃を持って搭乗している。p35-37

さすが,イスラエルです。

公共性の高い航空会社や,JRが行った経営の最大の失策は,労働組合への対応だ。日本航空で60年代半ばに始まった第一組合叩き,第二組合優遇策は,社内に不信・対立を引き起こし,業務を混乱させてきたのではなかったか。
日航ジャンボ墜落事故(御巣鷹山事故)後,当時の中曽根康弘首相の肝いりで就任した伊藤淳二会長は,安全対策と組合問題是正を軸に会社再建を進めた。しかし,旧体制派の政界を巻き返しで挫折,伊藤体制も崩壊した。
以後,完全民営化,日本エアシステムとの経営統合による経営体制後も組合問題はその数が10に増え8に減るといったような混乱を引きずっている。さらに経営トップの内紛・混乱も再発し,併せて連続トラブルの引き金を引いた。p56-57

山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」のモデルです。(というかそのままです)

飛行機が駐機場を離れる前に,CAが「ドアをアームにします(オートマチックにします)」とセットした上で確認する。この状態で,ドアハンドルを開こうとすると窒素ガスでドアを開き,続いて脱出シュートが展開する。緊急事態に備えての仕組みである。p148

離陸前にCAが放送する意味がようやく解りました。

カンタスウェイ=安全はすべてに優先する
(中略)
創業以来,先進国から遠く隔絶していたオーストラリアでは,航空機を壊すと修理のための部品の手配に気の遠くなるような時間がかかった。いきおい,「Tender Love Care(恋人に接するような整備)」といわれるように,整備に十分の手間ひまが注がれ,恋人をいとおしむように扱った。その伝統が,いまや高い整備能力となって安全をサポートしている。p194