読んだ本

変われる国・日本へ イノベート・ニッポン (アスキー新書)

変われる国・日本へ イノベート・ニッポン (アスキー新書)

感想

坂村健教授の本です。いまはユビキタスの方で有名ですが,どちらかというとトロンの方で有名な方です。私が学生のころB-Tronを真剣に買おうかと考えましたが,価格がメチャ高い記憶があります。これはアメリカの圧力によってつぶされましたが,組み込みのI-Tronの方が生き残り,家電やケータイ,車のECUなどに広く普及していて,日本の得意分野であるマニュファクチャリングの世界で活躍でき,嬉しい限りであります。
そういえば,東京にいたときの話ですが,自民党の旧橋本派のパーティーで坂村教授の講演会があることを知り,パーティ券を握りしめて講演を聴きたかったのですが,急な仕事の予定が入り残念ながら聞くことが出来ませんでした。

ICTイノベーションというのは,常に公共の利益と個人の権利のバランスをどうとるかが要となるのです。100%のプライバシー保護を要求していつまでも議論を進めなければ思考停止になってどんどん遅れて行きます。p45

そこで出てくる考え方が「ベスト・エフォート」なのです。各人ができる限り努力することを前提に,全体についての絶対保証はないことを知った上で利用する。すなわち「自己責任」を負うということです。
(中略)
ところが日本人は,このベスト・エフォート的な考えが不得意です。完璧を求めるあまり,サービスを提供する側も,使う側も腰が引けてしまいがちです。p49

ソーシャル・イノベーションは多くの場合「インフラ・イノベーション」です。例えば銀行という制度を考えるとか,高速道路というシステムをつくるなどという大規模な制度イノベーションが,日本は全くダメなのです,
今の日本は,この部分を,もっと重視しなければいけないと言っているわけです。p62

事実,米国の「パルミサーノ・レポート」を見ると,具体的なターゲットは意識的に定めず,イノベーションを起こすための「人材教育」と「投資戦略」そして「インフラ」という三つの環境整備にポイントを絞っていることがわかります。「○○をするためにいつまでにどうする」といった目標ではなく,予測不能イノベーションに対応できる形に「国全体を革新する」という強い意志を示しているのです。p104