読んだ本

化学兵器犯罪

化学兵器犯罪

感想

一年数ヶ月前にはハーバーに毒ガスは国際条約に違反するのではないか,と反論した化学者ハーンが,日常的に毒ガスを扱ううちに,その実戦使用においても「何らためらいもないほどになっていた」。戦争ではこのような「慣れ」によって,異常を異常と感じず,それを日常として受け止め,それによって自らの心の平穏を図るということなのだろう。そして戦争が終われば,自らの行為が異常な事態であったことは認識しても,戦争だったからということで多くの人々が容易に自分の罪を忘れるのだろう。ハーンは終生自分が行った異常行為を異常なものと認識し,覚えていた。
p106