読んだ本
- 作者: 石原慎太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1957/08/07
- メディア: 文庫
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感想・興味をひいた所
頷いて香をつまみながら彼は英子の写真を見詰めた。笑顔の下,その挑むような眼差しに彼は今始めて知ったのだ。これは英子の彼に対する一番残酷な復讐ではなかったか,彼女は死ぬことによって,竜哉の一番好きだった,いくら叩いても壊れぬ玩具を永久に奪ったのだ。つまんだ香を落とすと,彼は思わず香炉を握りしめていきなり写真に叩きつけた。
「馬鹿野郎っ!」
額はけたたましい音をたてて滅茶苦茶に壊れた。花籠が将棋倒しに転げ落ちた。同様する人々に,彼は険しい眼を向けて振り返った。
「貴方達には何もわかりゃしないんだ」
そのまま出て行く竜哉の眼に,幸子は始めて涙を見た。竜哉はそんな自分が歯ぎしりする程癪だった。 p74
石原慎太郎の小説を初めて読みましたが,発表当時の作品としてはものすごく斬新であったと思います。