読んだ本

こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)

こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)

感想・興味をひいた所

お金が回らない状態を記述してみよう。
いま社会全体で,1人あたり100万円のお金があるとしよう。そのとき,欲しい物がたくさんあって,皆が毎月50万円を支出するなら,それはそのまま誰かの収入となって各人が平均50万円を受け取るはずである。このとき全体ではお金は増えても減ってもいないので,各時点で各人の手元にあるお金は,相変わらず平均100万円である。
この経済での1人あたりの年収は50万円×12ヶ月=600万円,支出も600万円である。
次に,人々が節約に励み,月10万円しか使わないとしよう。月収が以前と同じ50万円なら,毎月40万円が残るから,1年で480万円もたまるはずである。しかし,そうはなり得ない。1人当たり毎月10万円しか使わなければ,平均月収は50万円ではなく10万円になるから,年収はたったの120万円である。つまり人々が節約すれば,それに応じた収入も下がるから,手元にあるお金は増えず,相変わらず100万円のままである。使っても使わなくても,お金の質は変わらないということである。
(中略)
このように,不景気のもとでのお金の節約は,本当の意味での節約にはならない。それどころか,人々から働く場を奪い,労働資源を無駄に捨てて経済全体の本当の効率を悪化させてしまう。つまり不況とは,節約の意味をはき違えた本末転倒が引き起こす一種の人災なのである。p161-163

経済学といっても直球の経済学ではなく,社会のとりまく様々な事象をもとに,経済でそのからくりを解いてみようというのが本書です。
ちょっと視点をずらした本書のような本が面白いです。むしろ経済の本質を解いているような気がします。